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債権の貸倒についての規定は?

  • 2011-08-08 (月) 22:50

破産管財人です。先日債権者から、「うちの持ってる売掛金については、貸倒処理していいのでしょうか」という問い合わせがありました。
この管財案件については配当がほとんど見込めない状況なんですが、何と回答すればいいもんなんでしょうか?
「配当は厳しいので、貸倒処理していいと思いますよ」 と言って構わないですか?



管財人としてはあまり考えなくていい論点だと思うのですが、そういう質問が来ないとも限らないでしょうね。
「そんな質問は管財人に聞くのではなく、税務署か顧問税理士に聞いて下さい」というのがひとつの回答かと思います。

・・・と言ってしまっては元も子もないので、破産と貸倒についての話です。


破産の場合と限定せずにひとまず一般的なイメージの話としてですが、
売掛金や貸付金などの債権が回収できないことが確定しましたら、「貸倒損失」という損失を計上します。そうすることにより、法人税や所得税、消費税において、その人(法人や個人事業者)の税金が安くなります。

で、ここで注意しないといけないのは、この損を税務上損失として認められるようにするためには、タイミングと方法について、一定の要件が求められているということです。

ではそのタイミングと方法とは何かということですが、この点については法人税法の通達に載っています。
税務署側からアナウンスされている、タックスアンサーを確認してみますと・・・
タックスアンサー:貸倒損失として処理できる場合

法人の金銭債権について、次のような事実が生じた場合には、貸倒損失として損金の額に算入されます。

1   金銭債権が切り捨てられた場合
  次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられる金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。

(1)  会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられる金額

(2)  法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定及び行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられる金額

(3)  債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額

2   金銭債権の全額が回収不能となった場合
  債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができます。ただし担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。
  なお、保証債務は現実に履行した後でなければ貸倒れの対象とすることはできません。

3   一定期間取引停止後弁済がない場合等
  次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは含みません。)について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができます。

(1)  継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき
  ただし、その売掛債権について担保物のある場合は除きます。

(2)  同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合

(法基通9-6-1~3)


以上のとおりでして、ざっと見ますと、「いわゆる倒産のような状態になれば損失としていいですよー」みたいなイメージが湧いてきます。
それはそれで問題は無いのですが、「破産の場合」というところに視点を置いてみますと、もう少し話が続きます。

まず、金銭債権が切捨てられた場合として、1が挙げられています。
1(1)には「会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられる金額」とあります。が、ここには「破産法」という文言はありません。
というか、そもそも破産については債権の「切捨て」という考えは無い模様です。
ですから「破産手続になったからといって、それだけ(破産手続開始)を以って、債権切り捨てとして貸倒損失処理してもそれは認められないよ」ということになります。

ということは破産の場合、1(2)にも該当しないということになります。文末が「切り捨てられる金額」なので。

で、1(3)についてですが、これは破産の場合には該当させてもいいでしょう。
ただ場合によっては問題があります。
それは何かというと「書面で明らかにした債務免除額」とあるように、書面で債務免除しないといけないということです。具体的には、内容証明を送って債権放棄する必要があります。
いくら回収の見込がほとんどないとはいえ、債務免除の通知をするのはどうも、という感になることも多いでしょう。
破産になったとはいえ回収の可能性は残しておきたい。だから債務免除通知なんてするわけない。ということもあるでしょうし。


続いて、金銭債権の回収が出来なくなった場合として 2が挙げられています。
ここで注意することは、「金銭債権の”全額が”回収不能となった場合」とあることです。
となると、破産手続の場合、全額が回収不能であることが確定するのは、破産手続が終了した時点であると考えるのが普通ですので、破産手続の開始決定段階では、貸倒処理はできないということになります。

ちなみに細かい話ですが、この 2の場合を元に貸倒処理をするときは、
 ・回収不能が明らかになった事業年度において
 ・損金経理することができます
とありますので、
 ・破産手続が終了した時点の事業年度とは別の事業年度で貸倒処理することはダメ
 ・損金経理(費用または損失として経理)していないと貸倒処理はダメ
ということになります。


最後の 3については、あまり破産とは関係が無さそうですが、まぁそんな感じですよってことで。


以上をみますと、破産手続の「開始決定」の段階では、貸倒処理することは難しいと考えておいたほうが無難です。
会社が貸倒処理をしてそれを基に法人税や消費税の申告をしますと、税務調査があった際には、その点の根拠や処理について質問があるのが通常です。
(税務調査まで至らなくても、電話で税務署から「この決算書に記載されている貸倒の部分について教えてくださいな」という質問が来ることもあります)

ですから、立証する書類をきちんと残しておくことが重要です。


なお、上記のタックスアンサーの内容は、法人税法基本通達です。
じゃあ法人税法の本法とか施行令とかでは、貸倒損失はどう規定されているの?と考えてみますと、「貸倒損失」そのものについてズバリ規定している箇所はありません。
法人税法第22条第3項において
「損金の額に算入すべき金額は、・・・原価・費用・損失の額とする・・・」という旨だけ規定されているのみです。

ということで、
 「実際に破産になったら債権の回収なんてほとんど見込めない(あっても数%程度)から、もう実質的には損失なんだし、そうであれば損金の額に算入すべきなんじゃないの?」
 「通達で定められていても、それはあくまで税務署側の言い分だからねー。納税者に対する拘束力は無いんじゃないの?」
という考えが出てくることもあるでしょう。
そんなこんなで、色々と不服審判所とか裁判とかで争われている論点であるのは確かです。


余談ながら、
 「じゃあ破産手続の開始決定の段階では何もすることは出来ないのか?ほとんど回収が見込めないのに・・・」
という考えにもなろうかと思います。
これについては、
 「そのような債権については貸倒引当金の設定対象になりますよ。債権額の50%ですが、損金に算入できます」
という話をすることになるでしょう。

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